運慶展(東京国立博物館)ポスター

奈良の興福寺北円堂に安置されている無著・世親立像(むちゃく・せしんりゅうぞう)が2017年秋に東京国立博物館(東博)で開催される「興福寺中金堂再建記念特別展 運慶」(以下、「運慶展」と記載)で展示公開されます。

特に、無著像は運慶展のポスターにも使用されていて、運慶展の展示作品の目玉になっています。

「無著・世親って何者?」「作者は誰!」といった無著・世親像について紹介します。

興福寺の国宝彫刻 木造無著・世親菩薩立像とは?

運慶展(東京国立博物館)ポスター
運慶展(東京国立博物館)ポスター

無著(むちゃく)と世親(せしん)は4世紀のガンダーラ(現在のパキスタン)で活動した兄弟の学者で「唯識思想(ゆいしきししそう)」の基礎を築いたとされています。

「唯識思想」とは、弥勒によって説かれた教義を体系化したものだそうで、後に中国で法相宗の根本教義となりました。

兄の無著が法相教学を学び、弟の世親がそれを大成したとされています。

上の写真は、東京国立博物館(東博)で開催予定の運慶展のポスターで、写っているのは無著像です。

 

無著・世親像は鎌倉時代に造像された仏像で、鎌倉彫刻の傑作と言われるとおり、まるで生きているように感じるほど写実的な彫刻です。

無著菩薩立像が老年の彫刻として造像されているのに対し、世親菩薩立像は壮年です。

両像の衣の表現も対照的で、無著像は衣の襞(ひだ)には乱れが見られ、衣の下の肉体がやせ細っていることを連想させます。

それに対して、世親像の衣には張りがあります。

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無著・世親菩薩立像の作者は運慶じゃない?

運慶作の仏像とされる無著・世親菩薩立像ですが、運慶は監修をするものの、自らノミをふるう場面は少なかったとされています。

運慶個人で仏像を彫っていたわけではなく、一門を率いて工房で制作していたのです。

それでは、無著・世親菩薩立像のノミをふるったという意味での作者は誰なのでしょうか?

無著菩薩立像は運慶の六男・運助(うんじょ)

世親菩薩立像は運慶の五男・運賀(うんが)

とされています。

 

運慶の仏像を彫る技術力が高いことは広く知られていることですが、工房単位の技術力もすごく高かったんですね。

 

運慶に五男・六男がいるということは、長男から四男もいます。

 

運慶の息子たち

  • 長男 湛慶(たんけい)
  • 二男 康運(こううん)
  • 三男 康弁(こうべん)
  • 四男 康勝(こうしょう)
  • 五男 運賀(うんが)
  • 六男 運助(うんじょ)

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無著・世親菩薩立像は興福寺の特別公開でしか拝観できない?

運慶展に出陳する無著・世親像ですが、普段は興福寺の北円堂に安置されています。

北円堂の本尊は国宝・弥勒如来坐像です。

無著菩薩立像は弥勒如来像の右後ろ、世親菩薩立像は弥勒如来の左後ろ(弥勒如来像の正面に向かった場合)に安置されています。

 

北円堂は通常非公開のお堂なので、興福寺に行けばいつでも無著・世親像を拝観できるというわけではありません。

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北円堂の特別公開は毎年あるので、それほど拝観するタイミングが少ない仏像ではないです。

とはいえ、運慶展での展示方法によっては、普段より近づいて無著・世親像を見られるかもしれません。

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