博物館や美術館に文化財(美術品)を寄託する、あるいは寄贈するという言葉を聞くことがあります。
文化財(美術品)の寄託と寄贈は一見似ている言葉ですが、もちろん意味が異なります。
この記事では寄託と寄贈の意味の違い、寄託品と収蔵品(館蔵品)の意味の違いを紹介します。
文化財(美術品)の寄託と寄贈の違いは?
寄託と寄贈の意味の違いは所有権が移るかどうかがポイントになります。
寄託(きたく)とは美術品の所有権を所蔵者に留めたまま、博物館で保管・展示等を行うことです。
寄贈(きぞう)とは美術品の所有権を無償で所蔵者から博物館に移譲することです。
簡単にいうと、寄託は所有者が博物館に美術品を貸し出しすること。
それに対して、寄贈は所有者が博物館に美術品をあげるということです。
寄託は所有権が移らないけど、寄贈は所有権が移ります。
ところで所有者が文化財を博物館に寄託するメリット、逆に博物館が寄託品を受け入れるメリットって何なのでしょうか?
所有者と博物館双方の寄託のメリットは?
寄託の意味が美術品の所有権を所蔵者に留めたまま、博物館に貸し出しすることだと説明しましたが、
所有者側、博物館側それぞれにメリットがあるからこそ寄託制度が生まれました。
所有者が博物館に文化財の寄託をするメリットは文化財を管理してもらえることです。
有形文化財には絵画、彫刻、工芸品、書籍・典籍、古文書、考古資料、歴史資料などのジャンルがあり、
ジャンルによって管理に適する環境の条件が異なりますが、
いずれも適切な湿度と温度の中で保存しなければ、すぐに劣化してしまいます。
また文化財は紫外線にも弱いです。
保存に適した環境で文化財を保存し続けることは、個人では容易なことではありません。
また、災害で破損、消失する恐れや盗難されるリスクもあります。
こうした事故や事件から文化財を守るために、博物館に寄託を依頼することも所有者側もメリットです。
ただし、博物館側はどんな文化財でも寄託を受け入れるわけではありません。
博物館は文化財の学術的な研究や調査を行う機関です。
博物館が寄託品を受け入れるのは、寄託品を調査研究できるメリットがあるからです。
また、寄託品を含む文化財を公開し、その価値を一般の人に知らせることも博物館の重要な仕事です。
文化財は古ければ何でも価値があるわけではありませんし、文化財を保管するにはもちろんお金がかかりますので、
博物館はすべての寄託品を受け入れるわけではないのです。
まとめると、所有者は寄託をすることで文化財を守ってもらえるメリットがあり、
博物館は寄託品を受け入れることで調査研究、展示などを行えるメリットがあります。
博物館の寄託品と収蔵品(館蔵品)の違い
博物館で展示される文化財(美術作品)には寄託品と収蔵品(館蔵品)がありますが、
寄託品の意味がわかれば収蔵品の意味もすぐにわかります。
寄託品が所有者から借りている文化財であるのに対し、収蔵品は博物館が所有権を持っている文化財です。
寄贈は所有者が博物館に文化財の所有権を移譲することなので、寄贈品は博物館の収蔵品となります。
展示されている文化財を見るぶんには、寄託品と収蔵品の違いは気になりませんが、
所有権を持つのが博物館なのか、そうでないのかが異なります。