博物館や美術館の展覧会で展示される文化財(美術作品)には博物館・美術館が所有する収蔵品(館蔵品)と寄託品があります。
寄託品は所有者から寄託されることで件数が増えますが、収蔵品が増えるのはどんな時でしょうか?
奈良国立博物館(奈良博)の仏像を例に見てみます。
収蔵品(館蔵品)が増える3つの方法
奈良国立博物館が所蔵する彫刻は2016(平成28)年4月現在で146件あります。
そのなかで国宝は1件、重要文化財は16件あります。
(「奈良国立博物館が所蔵する彫刻」と記載していますが、正確にいうと
独立行政法人国立文化財機構所蔵、奈良国立博物館保管の彫刻です。)
この収蔵品が増えるのは、おおまかに3通り通りあります。
1つめは文化財が購入された時に収蔵品が増えます。
2001(平成13)年に博物館は独立行政法人になりましたが、それより前の博物館が国の直轄だった時代は、
国費で文化財の購入が行われていました。
博物館が独立行政法人になっている現在は、
国からの運営費交付金の中から文化財購入の予算を確保して計画的に文化財の購入(収集)が行われています。
近年、奈良国立博物館によって購入された仏像を挙げます。
木造如来立像(もくぞうにょらいりゅうぞう)
- 購入された年:2014(平成26)年
- 造立された時代:平安時代 (10~11世紀)
- 品質:木造 彩色(榧の一木造)
- 像高:147.8センチメートル
- 購入額:43,200,000円
木造阿弥陀如来坐像 (もくぞうあみだにょらいざぞう)
- 購入された年:2011(平成23)年
- 造立された時代:平安時代 (9~10世紀)
- 品質:木造(榧の一木造)
- 像高:35.9センチメートル
- 購入額:52,500,000円
木造僧形立像(もくぞうそうぎょうりゅうぞう)
- 購入された年:2010(平成22)年
- 造立された時代:鎌倉時代 (13世紀)
- 品質:木造 彩色 截金(桧の一木割矧造か?)
- 像高:54.5センチメートル
- 購入額:15,000,000円
2つめは文化財の管理換えによって収蔵品が増えます。
文化庁が購入した文化財の管理が博物館に換えられることがあり、この時に博物館の収蔵品が増えます。
管理換えが行われるのは、国宝あるいは重要文化財指定されている仏像に多いようです。
奈良国立博物館は国宝指定されている薬師如来坐像を収蔵品として所有していますが、
この薬師如来坐像も文化庁から奈良国立博物館に管理換えされたものです。
3つめは文化財が寄贈されることによって収蔵品が増えます。
寄贈されることによって文化財の所有権が所有者から博物館に移るので、博物館の収蔵品が増えるのです。
奈良国立博物館の銅板押出如来倚像(白鳳時代)や銅造不動明王立像(鎌倉時代)などは
寄贈されて博物館所有になった文化財です。
寄贈に似ている言葉で寄託がありますが、意味が異なります。
寄託では収蔵品は増えません。
意味の違い:博物館の文化財(美術作品)の寄託と寄贈の違いとは?
収蔵品(館蔵品)が増える3つの方法をまとめると次のようになります。
収蔵品(館蔵品)が増える3つの方法
- 文化財を購入する
- 文化財の管理換えが行われる
- 文化財が寄贈される