今年の漢字の歴史と歴代の一文字の一覧・選ばれた理由のアイキャッチ画像

京都の名所・清水寺は本堂の舞台が有名ですが、それだけではありません。

 

毎年年末に「今年の漢字」が発表される場所としても知られています。

 

いまや年末の恒例行事といっても過言ではないこの行事は、いったいいつから行われているのでしょうか。

 

また、どういう基準で今年の漢字が選ばれているのでしょうか。

 

この記事では「今年の漢字」の歴史と歴代の選ばれた漢字の一覧を紹介します。

今年の漢字の始まりはいつ?意外に新しい「今年の漢字」の歴史

漢検 漢字博物館・図書館
漢検 漢字博物館・図書館

まず最初に「今年の漢字」の歴史について紹介しましょう。

 

清水寺の長き歴史と比べると、この行事の歴史は浅く、第1回は1995年(平成7年)です。

 

はじまってからまだ約20年しかたっていないのです。

 

 

この行事は、漢字検定試験(漢検)の主催団体である日本漢字検定協会がはじめたものです。

 

その年をイメージする漢字一字を日本全国から公募して、その中でもっとも応募数の多かった漢字が毎年12月12日の「漢字の日」に清水寺で発表されることになっています。

 

 

これまでに選ばれた歴代の一文字の年表は?同じ漢字が重複する場合もある?

では、これまでどのような漢字が「今年の漢字」として選ばれてきたのでしょうか。

 

今年の漢字は、その1年に日本人が感じたことを漢字一文字で世相として表現したもの。

 

ここでは歴代の選ばれた漢字を紹介するとともにその文字に込められた世相を振り返ってみましょう。

 

まずは年表です。

今年の漢字の年表

  • 1995年:震(シン)
  • 1996年:食(ショク)
  • 1997年:倒(トウ)
  • 1998年:毒(ドク)
  • 1999年:末(マツ)
  • 2000年:金(キン)
  • 2001年:戦(セン)
  • 2002年:帰(キ)
  • 2003年:虎(コ)
  • 2004年:災(サイ)
  • 2005年:愛(アイ)
  • 2006年:命(メイ)
  • 2007年:偽(ギ)
  • 2008年:変(ヘン)
  • 2009年:新(シン)
  • 2010年:暑(ショ)
  • 2011年:絆(ハン)
  • 2012年:金(キン)
  • 2013年:輪(リン)
  • 2014年:税(ゼイ)
  • 2015年:安(アン)
  • 2016年:金(キン)

わずか20数年の間に「金」のように歴代3回も選ばれている漢字もあります。

 

続いて各年の漢字が選ばれた理由を順番に紹介します。

 

漢字が意味するその年の世相やその字が選ばれた理由は?

1995年 「震(シン)」

阪神・淡路大震災や金融機関の崩壊。

 

オウム真理教による地下鉄サリン事件などまさに社会が震えたことを示した1字といえるでしょう。

 

1996年 「食(ショク)」

O-157による食中毒事件、そして狂牛病の発生。

 

さらには税金や福祉などを「食いもの」にした数々の汚職事件発生がこの1字に示されています。

 

1997年 「倒(トウ)」

山一證券をはじめとする大型倒産の続出。

 

そしてサッカー日本代表が強豪を倒してワールドカップに初出場するなどの出来事を反映しています。

 

1998年 「毒(ドク)」

和歌山で発生したカレー毒物混入事件や、ダイオキシンや環境ホルモンなど毒物に絡む事件や事故が社会問題になったことを反映しています。

 

1999年 「末(マツ)」

20世紀の末という意味に加えて、東海村の臨界事故や数々の警察の不祥事など、これまで信じられない事件が多発して「世も末」を実感したこと。

 

21世紀のスタートに「末広がり」を期待する意味も込められています。

 

2000年 「金(キン)」

シドニーオリンピックでの日本選手の金メダルの獲得。

 

南北朝鮮統一に向けた「金・金」首脳会談の実施。

 

そして新500円硬貨、二千円札の登場などお金にまつわる変化などの世相をこの漢字に反映されています。

 

2001年 「戦(セン)」

米国で発生した同時多発テロにより世界情勢が一変したことにより、対テロ戦争、炭そ菌との戦いを意味するだけでなく、世界的に発生した不況との戦いなどを示しています。

 

2002年 「帰(キ)」

北朝鮮の拉致被害者の帰国や、この年日本経済がバブル以前の水準に戻ったこと。

 

昔の歌や童謡がヒットしたことなど「原点回帰」の年であることが反映されています。

 

2003年 「虎(コ)」

阪神タイガースが18年ぶりにリーグ優勝したことや、衆議院選挙にマニフェストはじめて導入されたことで、政治家が声高らかに自らのスローガンを虎のように吠えたこと。

 

「虎の尾をふむ」ような自衛隊のイラク派遣問題などを反映しています。

 

2004年 「災(サイ)」

台風や地震、そして豪雨や猛暑などの天災が相次いだ1年。

 

さらにはイラクでの人質殺害や、美浜原発の蒸気噴出事故など数々の人災が多発したことを示しています。

 

「災い転じて福となす」ということわざに、来る年への希望の思いも込められています。

 

2005年 「愛(アイ)」

紀宮様のご成婚や、名古屋での「愛・地球博」の開催、そして「アイちゃん」とよばれる女性が各界で大活躍した一年を表しています。

 

一方で残忍な少年犯罪が発生するなど愛情の不足を感じさせる出来事も。

 

「愛」の必要性と「愛」の不足の実感をこの文字に込めています。

 

2006年 「命(メイ)」

皇太子ご一家に悠仁様が誕生されて、日本中が新しい命の誕生を祝福した1年。

 

その一方でいじめによる子どもの自殺、虐待など、命にまつわる痛ましい事件が多発しました。

 

その意味で命の重み、大切さを痛感した気持ちがこの文字に表されています。

 

2007年 「偽(ギ)」

食品偽装をはじめ、政治やスポーツでの数々の不正や汚職の発生など、次々と「偽」にまつわる事件が発覚して、一体何を信じたら良いのか人々がわからなくなった1年をこの文字で表しています。

 

2008年 「変(ヘン)」

日米の政界の変化や、リーマンショックを発端にした世界的な金融情勢の変化。

 

食の安全性に対する意識、物価の上昇による人々の生活。

 

世界的な気候異変などさまざまな変化を人々が感じたことがこの文字に表されています。

 

2009年 「新(シン)」

裁判員制度の開始などさまざな新しいことの始まりにに期待し、希望を抱きつつ不安を感じた一年。

 

新しい時代への期待がこの文字に込められています。

 

2010年 「暑(ショ)」

夏場に観測史上最高の平均気温を記録し、熱中症が社会問題になった1年。

 

またチリ鉱山の事故では、暑い地中から作業員全員が無事に生還するなど暑さにまつわる出来事の多さをこの文字が示しています。

 

2011年 「絆(ハン)」

東日本大震災の発生で人々の「絆」が大切に感じられた1年。さらになでしこジャパンのチームの絆にも感動したこともこの文字に込められています。

 

2012年 「金(キン)」

金環日食など「金」にまつわる天文現象、そして数多くの金字塔が打ち立てられた1年。

 

さらには、お金をめぐるさまざまな問題が表面化したことからこの文字が選ばれました。

 

2013年 「輪(リン)」

2020年のオリンピック・パラリンピックの開催地が東京に決まり、さらに環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に日本が参加表明するなど、輪を感じさせる出来事への関心がこの文字に込められました。

 

2014年 「税(ゼイ)」

消費税率が17年ぶりに8%に引き上げられたことがこの文字を人々に選ばせたのでしょう。

 

また、税に関わる話題が政財界で数多く取りあげられた1年でもありました。

 

2015年 「安(アン)」

日米安全保障関連法案の審議で与野党が対立したことや、さまざまなテロ事件の発生や異常気象に対する不安。

 

さらには建築偽装問題やメーカーの不正など暮らしの安全が揺らいだことで人々が安心を求めたことがこの文字に託されたのでしょう。

 

2016年 「金(キン)」

リオ五輪の日本選手団の活躍とともに、政治と金の問題に揺れた1年。

 

さらにマイナス金利が初導入されたことがこの文字に表されています。

このように今年の漢字には、その年の世相がうまく反映されています。

 

 

「今年の漢字」はどのように募集され、どのような方法で発表されるのでしょうか。

今年の漢字の選び方と応募総数は?清水寺のお坊さん(貫主)が選ぶわけじゃない

清水寺本堂
清水寺本堂

今年の漢字に選ばれた一文字を清水寺のお坊さん(貫主)が大きな筆で揮毫する姿をニュースの報道で見たことがある人も多いはず。

 

そのため今年の漢字は清水寺の貫主のイメージが強いですが、決して貫主自らが一文字を選んでいる訳ではありません。

 

 

その応募は過去の例に基づくと、毎年11月1日から12月上旬にかけて募集され、誰でも応募することができるのです。

 

 

その応募方法は、インターネットやハガキ、さらには全国の書店や図書館、そして清水寺など全国約900箇所に設置された応募箱から投票できるのです。

 

 

 

そして今年の漢字の応募総数は15万件以上にのぼり、もっとも得票数の多い1文字が今年の漢字に選ばれるのです。

 

 

そのような過程を経て、毎年12月12日の漢字の日に清水寺で貫主の手によって、大きな和紙にその1文字が記されることで発表されるのです。

 

 

 

発表される場所は清水の舞台で有名な本堂です。

 

そもそも、なぜ清水寺で今年の漢字が発表されるのでしょうか。

 

今年の漢字はなぜ清水寺で発表されるのか?

清水寺で発表される理由は、今年の漢字を主催している日本漢字検定協会の理事を清水寺の貫主である森清範氏が務めていたからです。

 

 

その後2009年にいわゆる「漢検協会事件」が発生して、森氏が同会の理事を辞任し、一時期今年の漢字への清水寺の協力が危ぶまれることもありましたが、同会の体制刷新により引き続き協力することになったのです。

 

 

そして発表された漢字は12月いっぱい本堂で一般公開され、その後清水寺本尊の千手観世音菩薩に奉納されます。

 

 

今やその年の日本の世相を反映する指標の1つともいえる「今年の漢字」。

 

清水寺で発表されるこの行事以外にもテレビで芸能人や著名人に対して、その人にとっての「今年の漢字」がインタビューされることもあり、しっかりと年末の風物詩として定着しています。

 

 

今年の漢字の発表時間と展示期間は?

今年の漢字が発表される時間や一文字が書かれた和紙の展示場所を紹介しています。