室生寺金堂(むろうじこんどう)は、平安時代初期の山岳寺院の建築として現存するほぼ唯一の遺構です。
京都の清水の舞台とも共通する建築で、山岳寺院らしさが感じられる要素があります。
お堂の内部には室生寺の本尊・釈迦如来立像をはじめとした仏像が祀られています。
この記事では室生寺金堂の建築様式や仏像、拝観所要時間を紹介します。
女人高野・室生寺金堂の歴史と建築様式
山の中にあるため斜面が多い室生寺は石段が多い寺院です。
鎧坂(よろいざか)と呼ばれる石段を登りきった先には、やや広い平地があり、そこに室生寺の金堂があります。
金堂の読み方は「こんどう」です。
金堂はお寺の本尊を祀る仏堂です。
金堂よりも本堂という名称の方が聞きなれている方もいるかもしれませんが、
どちらも同じような機能を持つ建造物と思って頂いていいです。
飛鳥時代から平安時代初期に創建された寺院の本尊を祀る仏堂は、本堂ではなく金堂と呼ばれている場合が多いです。
室生寺は奈良時代最末期~平安時代初期に創建された寺院なので、金堂がある古代寺院の実例の1つと言えます。
ただし、室生寺は鎌倉時代末期(1308年)に創建された潅頂堂(かんじょうどう)と呼ばれるお堂が本堂と呼ばれています。
金堂と本堂の両方が存在する珍しい寺院なのです。
金堂の屋根は寄棟造、杮葺(こけらぶき)です。
桁行5間、梁間5間の建造物で、仏像を祀る正堂(しょうどう)と礼拝するための礼堂(らいどう)に分かれています。
北側の桁行5間、梁間4間が正堂で、平安時代(9世紀後半)の建築ですが、
鎌倉時代末期に大規模な改修を受けていて部材の多くが取りかえられました。
礼堂は正堂の南側の桁行5間、梁間1間ですが、江戸時代(1672年)に付けくわえられたものです。
礼堂は斜面に張り出しているため、長い床柱を下の石積の壇上まで延ばし支えるようにしています。
このように斜面にせり出した床下を長い束で支える建築様式を懸造(かけづくり)といいます。
清水の舞台で知られる京都市・清水寺の本堂、
室生寺とセットで観光コースになることが多い奈良県桜井市・長谷寺の本堂、
清水寺と長谷寺とともに全国有数の観音霊場として知られる滋賀県大津市・石山寺の本堂も懸造の建築様式で知られています。
室生寺金堂は過去に大きな改修を受けているものの、
平安時代初期の山岳寺院の仏堂で現存する遺構として大変貴重で国宝指定されています。
室生寺五重塔も平安時代初期の山岳寺院の建築の遺構で、こちらも国宝指定されています。
金堂はお寺の本尊を祀る仏堂と説明したとおり、室生寺金堂には室生寺の本尊が安置されています。
つづいて金堂の仏像について触れます。
室生寺金堂の仏像も平安時代を代表する彫刻
室生寺金堂には室生寺の本尊・釈迦如来立像が安置されています。
釈迦如来立像は平安時代初期の仏像で国宝指定されています。
また、室生寺の仏像として有名な国宝の十一面観音立像も安置されています。
ほかにも平安時代から鎌倉時代の仏像が安置されていて、重要文化財の仏像が多数存在します。
室生寺金堂の見所と見学所要時間
室生寺金堂の見所は、お堂の周りを含めた雰囲気です。
金堂の古くなって色あせた建築部材は、境内の木々と違和感なく溶け込んでいます。
これは山の中に良い意味で渋いお堂があるから見られるもので、都会のお寺ではなかなか感じられない魅力です。
石段の下に床面がせり出した懸造の建築にも注目したいところです。
室生寺の奥の院も懸造の建築なので、比較してみるのも面白いかもしれません。
室生寺金堂は、お堂の内部に立ち入ることができません。
そのため、内部で祀られている仏像は外側から拝観することになります。
特別拝観の時は金堂に内部に立ち入ることができます。
金堂の見学所要時間の目安は、3分程度です。
内部の仏像を屋外からでもじっくり拝観したい人は、10分以上かける人もいるかもしれませんが、
多くの人は外観と内部を少し見るだけなので、ほとんど拝観に時間をかけません。