東大寺法華堂の執金剛神像(しゅこんごうしんぞう)は長年、秘仏とされてきた仏像で、

現在でも公開される日が限られています。

普段は混雑していない法華堂も御開帳の日は参拝者が増加します。

また、執金剛神像の拝観時間は法華堂の拝観時間と異なるので注意が必要です。

この記事では国宝・執金剛神像の特徴や拝観情報について記載しています。

東大寺法華堂(三月堂)の執金剛神像の意味とは?彩色が美しい粘土の仏像

 

東大寺法華堂(三月堂)執金剛神立像

  • 員数:1躯
  • 文化財指定:国宝
  • 時代・年代:奈良時代(8世紀中頃)
  • 素材・技法:塑造、彩色、金箔押
  • 像高:170.4cm

東大寺法華堂の執金剛神(しゅこんごうしん)立像は奈良時代に造像された塑造(そぞう)と呼ばれる粘土作りの仏像です。

像高は日本の平均な成人男性に近い等身大の像です。

 

東大寺の初代別当(住職)の良弁(ろうべん)僧正の念持仏だったと伝わっています。

 

法華堂の本尊・不空羂索観音菩薩(ふくうけんさくかんのんぼさつ)立像の背後にある厨子の中に安置されています。

9世紀には現在のような配置で安置されていたことが記録からわかっています。

 

 

霊験あらたかな像として平安時代には秘仏とされていたようです。

そのため、およそ1300年前に造像された仏像でありながら、彩色が比較的残っています。

ところどころに見られる彩色から、当初はとても鮮やかな像であったことを想像できます。

 

執金剛神とは仏法の守護神で、金剛杵(こんごうしょ)という法具を手に持って戦います。

執金剛神は単独の神将ですが、執金剛神が2体に分かれて生じた守護神が仁王様として親しまれている金剛力士です。

 

法華堂の執金剛神立像も手に金剛杵を持っていて、中国風の甲冑を身につけています。

表情は憤怒の相を写実的に表現しています。

 

目には鉛のガラス材をはめ込んで、他の体の部分とは別材で表現しています。

 

抑揚のある肉身表現や着衣、鎧の質感表現は、東大寺戒壇堂の四天王像に似ています。

また耳の形も戒壇堂四天王像のものと一致します。

仏像の耳は、像の作り手の特徴が出る部分なので、両像の作者は同じと推定されています。

 

戒壇堂の四天王像と作風が似ているとは言え、顔や髪の造形や鎧の裾の形を変えるなど、

画一的になりすぎないように細部を作り分けています。

 

 

 

力強く握った左腕に血管が浮き出ていることや、金剛杵を構える姿、

強い怒りの形相から、戒壇堂の四天像よりも激しさを感じます。

 

天平時代の塑造の傑作と評されることもある法華堂の執金剛神像はいつ開帳されるのでしょうか?

東大寺法華堂の秘仏・執金剛神像の御開扉の日程や拝観料は?

法華堂の執金剛神像は、毎年12月16日に開帳されます。

特別に公開されるのは年に1日だけです。

 

12月16日は東大寺初代住職の良弁(ろうべん)僧正の命日で、東大寺では良弁忌という法要が行われます。

 

良弁僧正の念持仏と伝わる執金剛神像の御開扉はこの日に行われ、法要終了後の午前10時頃から拝観することができます。

年に1度の御開帳ということで、拝観開始前は法華堂前に行列ができます。

 

執金剛神像の拝観終了時間は午後4時です。

法華堂の拝観終了時間は午後4時30分なので、執金剛神像の拝観終了は少し早いです。

 

法華堂の拝観料は、執金剛神像の開帳日以外の日と同じ500円です。

 

国宝・執金剛神立像の公開日の法華堂の入堂ルート

 

東大寺法華堂の執金剛神立像は、不空羂索観音菩薩立像の背後にある厨子の中に安置されています。

 

厨子が北向きに置かれているのに対し、執金剛神立像以外の法華堂のすべての仏像は南向きに安置されています。

つまり不空羂索観音像と執金剛神像は(厨子越しですが)背中を合わせる形で祀られています。

 

執金剛神像の公開日のみ、法華堂の北面に立ち入ることができます。

 

執金剛神立像は少し高めの位置に安置されています。

見えなくはないですが、少し拝観しづらく感じるかもしれません。

 

法華堂の北端の壁際には、数段のひな壇が置かれていて、その段の上から執金剛神像を拝観することができます。

 

ひな壇は集合写真の時に後列の人が乗るものをイメージしていただければ良いです。

仏像絡みで言うなら、三十三間堂の千手観音立像が乗っているひな壇を小規模にしたようなものですね(笑)

 

ひな段の上に登れば、目線に近い高さで執金剛神像を拝観することができます。

 

法華堂北面からは障子越しに自然光が入ってきます。

天気が悪ければ日の光があまり入ってこないので、堂内が薄暗くなり、執金剛神像が少し見づらくなります(泣)

 

天気の良し悪しは運なので、こればかりはどうしようもないですね。

 

通常なら混雑していない法華堂も、この日はそこそこ混雑しています。

 

普段は法華堂の仏像を南側からしか拝観することができないため、奥の方に配置されている多聞天像や広目天像が見づらいです。

執金剛神像の公開日は法華堂の北面に回り込む時に、法華堂諸尊を側面や斜め後ろ側から見ることができます。

 

見づらい位置にある仏像を拝観したり、像の後ろ側を確認できるのも、御開帳日の良いところです。

 

法華堂・執金剛神像の拝観情報のまとめ

  • 御開帳日程:毎年12月16日
  • 拝観時間:法要終了後(午前10時頃)~午後4時
         (法華堂の拝観は午後4時30分まで)
  • 拝観料金:500円