千手観音の手の本数や、派生元の観音菩薩との違いなどを説明しています。

千手観音の意味や姿の特徴は?

千手観音は普通の観音の2段階進化系?

千手観音は観音菩薩が変化した姿の一つです。

観音菩薩は救済する衆生にふさわしい姿に変化して現れる仏で、三十三の姿に変化できるとされています。

 

観音には千手観音以外にも様々なバリエーションの観音が存在しますが、それらを総称して変化観音(へんげかんのん)といいます。

 

関西の33つの観音霊場を総称した西国三十三所や、千手観音がたくさん祀られている京都の寺院として著名な三十三間堂の33という数字の由来は、観音の三十三変化がもとになっています。

 

変化観音が生まれる前のオリジナルの観音を聖観音(しょうかんのん)といいます。

 

千手観音は「十一面千手千眼観音」と呼ばれることも多く、千本の手は、どんな衆生も漏らさずに救済しようとする、観音の慈悲と力の広大さを表しています。

 

十一面千手千眼観音の十一面とは11個の面(つら:顔のこと)を持つことを示しています。

 

聖観音は顔が1つで、腕が2本の人間と同じような姿をした観音ですが、その聖観音の頭の上に10つの小さな頭(像によって頭の個数には差があります)を乗せた観音を十一面観音と言います。

 

十一面観音は観音のバリエーションである変化観音の中でも最も古いとされていますが、その十一面観音に千本の腕をつけた観音が千手観音です。

 

千手観音は腕が多い印象が強いですが、頭の数も多い観音なのです。

 

十一面千手千眼観音の千手千眼とは、千つのそれぞれの掌に1つの眼を持つことを示しています。

 

聖観音 + 頭10つ = 十一面観音

十一面観音 + 腕1000本 = 千手観音

 

聖観音 → 十一面観音 → 千手観音 というふうに千手観音は観音の2段階進化系(変化系)とイメージすれば、その像容を理解しやすくなるかもしれません。

 

千手観音の手の数は1000もないのが普通

千手観音の仏像は日本国内でたくさん現存していますが、実際に手の数が1000つある千手観音はほとんど存在しません。

 

千手観音像の作例で圧倒的に多いのは42つの手を持つ千手観音です。

千手観音という名前なのに、なぜ手の数が42つなのでしょうか?

 

まず千手観音の42つの手を大別すると、2つの本手と40つの脇手に分けることができます。

本手とは千手観音が胸の前で合掌している2つの手のことで、それ以外の手を脇手と呼びます。

 

千手観音は1つの手で、天上界から地獄までの25の世界を救うとされています。

25の世界のことを三界二十五有と呼ぶそうですが、千手観音は40つの脇手があることから25の世界を40回救済するとされています。

 

25 × 40 = 1000 になるので千手観音の手の数は40つの脇手に2つの本手を合わせた42本で作成されることが多いそうです。

 

計算式は単純ですが、その意味は理解できるようなできないような難しいものですね。

 

とにかく千手観音の慈悲が強いのは間違いないようで、それがわかれば良しとしましょう。

お寺で千手観音が祀られているのを見かけたら腕の本数を数えてみましょう!

 

たいていは42本のはずです。

もともと42本あっても欠損していて、腕の数が42本より少ない場合もありますが、十一面千手千眼観音と言う名前を思い出して、顔の数がたくさんあれば千手観音と判断してもいいでしょう。

 

腕がたくさんあっても、顔が1つだけしかなければ准胝観音という千手観音とは別の観音の可能性があります。

ほとんどの千手観音の腕の数が42本とはいっても、実際に1000の手を持つ千手観音も少なからず現存しています。

 

1000の手を持つ千手観音があるお寺はどこ?

実際に千本の手を持つ千手観音を真数千手(しんすうせんじゅ)と言います。

真数千手や1000に近い数の手を持つ千手観音の作例は少ないですが、著名なのは

・奈良市の唐招提寺
・大阪府藤井寺市の葛井寺
・京都府京田辺市の寿宝寺

などです。

羽根の様に広がる無数の手に圧倒されます。

 

千手観音の真言は?

千手観音の真言は 「おん ばざら たらま きりく そわか」です。

・おん は帰依する
・ばざら は金剛
・たらま はダルマ(法)
・仏教の諸尊を梵字一文字で表したものを種子(しゅじ)といいますが、きりく は千手観音の種子です
・そわか は「成就あれ」という意味だそうですが、唱えるお寺も唱えないお寺もあります

金剛法尊に帰依したてまつる という意味になります。