東大寺のお水取り(修二会)はその本行が終わるころには冬が明けているため、奈良の春を告げる行事とも言われています。
例年、その行中の「お松明」や「お水取り」の時間は多数の見学者が集まり混雑します。
東大寺の修二会の日程や時間、混雑しづらい日付などについて触れています。
奈良・東大寺のお水取り(修二会)2019年の日程や時間は?
まずは、さらっと東大寺の修二会の期間や時間を記載します。
東大寺の修二会の開催概要
修二会の期間
- 2019年3月1日(金)~3月14日(木)
お松明の時間
- 修二会期間の毎日午後7時00分
(ただし、3月12日(火)は午後7時30分~、3月14日(木)は午後6時30分~)
お水取りの日時
- 3月13日(水)午前1時00分~
修二会の場所は二月堂
修二会が行われるのは、東大寺大仏殿の東側にある二月堂。
「お松明とは?」「お水取りって何?」という方のために、修二会の歴史とおおまかな内容について説明します。
東大寺二月堂の修二会の歴史や意味は?正式名称は十一面悔過
前述の通り、東大寺の修二会は、毎年3月1日~3月14日に東大寺の境内にある二月堂で実施されます。
その歴史は古く、752年(天平勝宝4年)に実忠和尚(じっちゅうかしょう)が創始しました。
実忠和尚は、東大寺の開山(初代住職)・良弁僧正(ろうべんそうじょう)の高弟にあたる人物です。
奈良時代に創建された東大寺は、現代までに二度も伽藍の大半を焼失することがありましたが、
修二会は「不退の行法」として一度も絶えることなく実施され、平成31年(2019)には1268回を数えます。
修二会は「お水取り」や「お松明」とも呼ばれますが、正式名称を十一面悔過(じゅういちめんけか)と言います。
十一面悔過とは、わたしたちが日常の中で犯しているたくさんの過ちを二月堂の本尊・十一面観世音菩薩の前で、東大寺の僧侶たちが人々にかわって懺悔(さんげ)し、 国家安泰や万民豊楽といった人々の幸せを希求する法要です。
東大寺の修二会は、現在は3月1日~3月14日の2週間実施されていますが、元々は旧暦の2月1日から行われていたため、二月に修する法会という意味で修二会と名づけられました。
「二月堂」というお堂の名称もこのことが由来となっています。
修二会の大まかな流れは下記の通りです。
まず良弁僧正の命日にあたる12月16日の朝に、翌年の修二会の行を執り行う練行衆(れんぎょうしゅう)という11人の僧侶が発表されます。
年が明けて2月20日から別火(べっか)と呼ばれる前行が始まり、練行衆は泊まり込みで本行に備えます。
2月23日は「花ごしらえ」の日で、練行衆は紙で椿の造花を作ります。
この椿の造花は修二会の本行の期間、二月堂本尊の十一面観音菩薩の祭壇に飾られます。
余談ですが、この椿にちなんだ「お水取りの椿菓子」が和菓子屋さんで売られます。
3月1日になると練行衆は行列を組んで二月堂へ向かい、本行が始まります。
本行の2週間期間は、毎晩高さ約6メートルの松明(たいまつ)に火が灯され、練行衆は二月堂へ入り、深夜まで祈りをささげます。
そのときに声明(しょうみょう)が唱えらえます。
声明とは、仏典に節をつけて唱えるもので、独特な節回しが特徴的な仏教音楽です。
幽玄な響きがあるため、その意味を理解できずとも聞き入ってしまう魅力があります。
練行衆がお堂入りした後に、火が灯された松明は二月堂の舞台の欄干(手すり)に掲げられます。
松明から降り落ちる火の粉を浴びると、無病息災のご利益があると言われているため、多数の見学者が二月堂の舞台下に集まります。
これが東大寺のお水取りで有名な「おたいまつ」で、修二会が「おたいまつ」とも呼ばれる理由です。
3月12日深夜(13日の午前1時半頃)にはお水取りが行われます。
お水取りとは、二月堂本尊の十一面観音にお供えするお香水(おこうずい)を汲み上げる儀式。
籠松明(かごたいまつ)がたかれ、練行衆は祈りの合間に、二月堂の下にある閼伽井屋(あかいや)と呼ばれる建物の中にある若狭井(わかさい:井戸のこと)の水(お香水)を汲み上げに行くのです。
修二会の本行が終了した3月15日には、練行衆が使用した金襴(きんらん)の帽子(ダッタン帽)を幼児にかぶせる「だったん帽いただかせ」の行事が行われます。
ダッタン帽をかぶせてもらうと健やかな子が育つとされています。
東大寺二月堂の内部は通常非公開ですが、修二会の期間も非公開です。
修二会の期間に多くの見学者が二月堂に集まりますが、そのほとんどの人たちの目的は、二月堂の舞台上から振り落とされる巨大な松明の火の粉を浴びるため(あるいはその様子を見学するため)です。
お松明の時間と本数は日によって異なる!混雑しにくい見学におすすめの日はいつ?
お松明が灯され、火の粉が振り落とされるのは、修二会の2週間の毎晩なのですが、日によって松明の本数や時間が異なります。
お松明の本数や時間をまとめたものは下記の通り。
お松明の時間と本数
- 3月1日(金)~11日(月)、13日(水):午後7時00分~、松明の本数は10本
- 3月12日(火) :午後7時30分~、11本で松明のサイズも大きい
- 3月14日(木) :午後6時30分~、10本だが松明が横並びする
松明の本数が多く、そのサイズも大きな3月12日が例年、見学者が多く、一番混雑します。
3月14日も松明の本数は10本ですが、10本の松明が横並びするため、他の日よりは混みやすいです。
また、2019年は土日にあたる3月2日(土)、3日(日)、9日(土)、10日(日)も平日よりは混雑することが予測されます。
お松明の見学は、3月1日~14日のどの日でも可能なので、こだわりがなければ混雑しにくい日に参拝することをおすすめします。
2019年の東大寺修二会で混雑しそうな日
- 2日(土)
- 3日(日)
- 9日(土)
- 10日(日)
- 12日(火)
- 14日(木)
ちなみに雨天でもお松明は実施されます。
天気が悪い日は、見学者が少なくなり、混み具合はマシになるはずです。
お松明の大きさや重さはどのぐらい?
3月12日以外の日に灯される10本のお松明の長さは約7m、重さは40kg。
3月12日の11本の松明は、籠松明(かごたいまつ)と呼ばれ、他の日のものより長くて重いです。
その長さは約8m、重さは70kg、直径は70cm。
お松明は竹を軸にして松葉をからめたものです。
【#お水取り】#奈良国立博物館
新館 エントランスホールに #お松明 の際に実際に使用されるものと同じ #籠松明 を展示しています。
こちらで記念撮影はいかがでしょうか?https://t.co/cbAnlkRfP6 pic.twitter.com/jNNbLwDUoC— 奈良国立博物館 (@narahaku_PR) 2018年2月23日
それに対して、籠松明は薄い松の板を籠のように編んで、松葉をたくさんからめることができるようにしたもの。
奈良国立博物館新館のエントランスホールに、実際に使用されるものと同じ籠松明が展示されているので、時間の都合がつくなら見学するのも良いのではないでしょうか。
奈良国立博物館の特別陳列【お水取り】の見学もおすすめ
【特別陳列・特集展示】#奈良国立博物館
本日、2月6日(火)より開幕です。#お水取り →https://t.co/QxoHf5tEMF #名もなき知識、発願者たち → https://t.co/BSbcc4iNxi #薬師寺の名画→ https://t.co/zK4tGRG7Z7#名品展 も工芸の陳列がかわりました。
#工芸 →https://t.co/keZKNqoQwv pic.twitter.com/WQ5utUJCd3— 奈良国立博物館 (@narahaku_PR) 2018年2月6日
修二会を見学しに行くなら、東大寺から歩いて行ける距離にある奈良国立博物館も観覧することをおすすめします。
お水取り展の期間は、修二会の本行が終了する3月14日(木)までです。
通常は毎週月曜日が休館日なのですが、修二会の期間にあたる3月1日~14日は、無休で開館しています。
開館時間は下記の通り。
修二会期間の奈良国立博物館の開館時間
3月3日(日)~7日(木)・10日(日)・11日(月)・13日(水)・14日(木)は午前9時30分~午後6時00分。
籠松明の日にあたる3月12日(火)は午前9時30分~午後7時00分。
金曜日と土曜日にあたる1日(金)・2日(土)・8日(金)・9日(土)は午前9時30分~午後8時00分。
※いずれの日も入館は閉館の30分前まで
お水取り展では、修二会の法会に用いられた法具やその様子を伝える文書、東大寺にまつわる絵画や境内から発掘された考古遺物が展示されていて、参拝者は外側からしか見学できない修二会をより深く知ることができます。
絶対秘仏の二月堂本尊の姿を光背や図像で想像しよう!
二月堂と言えば、絶対秘仏を祀ることで有名です。
絶対秘仏とは公開される機会のない仏像のことを意味します。
二月堂の本尊は、大小2体の十一面観音菩薩像(それぞれ大観音、小観音と呼ばれる)です。
どちらも絶対の秘仏とされ、二月堂に籠る練行衆ですらその姿を拝することができません。
【#お水取り】#奈良国立博物館
主な出陳品
重要文化財 二月堂本尊光背 頭光
奈良 東大寺
修二会の本尊である二月堂十一面観音(大観音)の光背の頭光です。江戸時代の寛文7年(1667)に二月堂の火災で、本尊の光背は破損して断片が残るだけになってしまいました。→https://t.co/1ZIbvdzWwy pic.twitter.com/xm2dqfcfps— 奈良国立博物館 (@narahaku_PR) 2018年2月28日
大観音そのものは絶対秘仏ですが、大観音の光背の頭光は展示されているため拝観できます。
(ちなみに奈良国立博物館の仏像館では大観音の身背が展示されていて、こちらも拝観可能)
光背の大きさから仏像の大きさを推測することができるので、大観音の大きさを想像してみると面白いでしょう。
また小観音は、中世以前は現代ほど厳重な秘仏ではなかったようです。
小観音の姿を描いた図像が残されています。
お水取り展ではその図も展示されているので、直接拝観できない姿を図像で確認してみるのも良いですよ。
寒い中、長時間立ち止まって見学するので、服装は厚着していくように!