多面多臂とは、お寺で仏像の解説文を読んでいるとたまに見かける言葉ですが、日常生活で使う機会がほとんどなく読み方や意味がわからないという方も少なくないはずです。
そんなわけで当記事では、ひたすら多面多臂について語ります!
多面多臂の読み方や意味は?
多面多臂の読み方は「ためんたひ」です。
多面多臂の意味を推測する際に、多面ということばから顔が多いというのはわかると思いますが、
多臂の「臂」が見慣れない漢字で意味がわからないという人が多いはずです。
「臂」とはひじ・肩から手首までの部分といった意味で、要するに腕のことです。
つまり多面多臂の意味は「顔と腕が多い」という意味です。
われわれ人間は多面多臂ではないのですから、日常生活で使用する頻度が少なく、どおりで聞きなれない言葉なわけです。
意味がわかったところで、多面多臂ということばの用例を見てみましょう。
阿修羅や千手観音も多面多臂?
多面多臂ということばを最も目にする機会が多いのは、お寺だと思います。
仏像の解説で「ほにゃらら像のような多面多臂像がうんたらかんたら~」
などと記載されているのを目にした記憶がある人もいるのではないでしょうか。
多面多臂像とは、顔と腕が多い仏像のことですから、そういった仏像の解説で使用される頻度が高いです。
多面多臂像の具体例としてよく知られているのは阿修羅像でしょう!
阿修羅像と聞くと、奈良興福寺の阿修羅像を連想する人も多いのではないでしょうか?
ご存じの通り、阿修羅像は顔が3つ、腕が6本の仏像です。
仏像は顔や腕の数が像によって様々ですから、顔と腕の数が一言でわかる言葉がないと、仏像の像容を理解する際に不便です。
そこで仏像の解説をする際に「X面Y臂」の像という言い回しが使用されることがあります。
XやYには具体的な漢数字が入りますが、長々と説明するより具体例を提示した方がはやいので、先ほどの阿修羅で考えてみましょう。
阿修羅像は顔が3つあるので、三面の仏像と言えます。
また、腕が6本あるので六臂の仏像と言えます。
これを「X面Y臂」の言い回しに当てはめると、三面六臂(さんめんろっぴ)と言えますので
「阿修羅像は三面六臂の仏像」と表現されることがあります。
多面多臂像の実例として阿修羅と並んで広く知られているのは、千手観音でしょう。
千手観音はその名の通り、1000本の腕を持つ観音として知られていますが、
仏像で1000本の腕を持つ作例は稀で、実際には42本の腕しか持たない千手観音像がほとんどです。
また、千手観音は腕だけでなく顔の数も多い仏でして、顔の数が11つあるのが一般的です。
以上のことから千手観音像の多くは、「十一面四十二臂」の像と言えます。
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多面多臂の次元を超えた仏像が存在する
多面多臂の言葉の用例を見てきましたが、仏像の中には顔と腕の数が多いのとは別に、目の数が多いものも存在します。
目の数が人間より多い仏像として知られるのが、不空羂索観音(ふくうけんさくかんのん、ふくうけんじゃくかんのん)です。
不空羂索観音は千手観音と同様に観音菩薩が変身した姿の1つですが、眉間に第三の眼を持ちます。
眉間に第三の眼を持つキャラクターが登場するマンガがいくつかあるので、眉間の眼に新鮮さを感じない人もいるでしょう(笑)
第三の眼を持つ不空羂索観音像として知られているのが、
東大寺法華堂の不空羂索観音立像(国宝)や興福寺南円堂の不空羂索観音立像(国宝)です。
両像とも顔は1つで、腕は8本なので、顔と腕の数を表現した言い回しだと
「一面八臂」の像なのですが、眉間に第三の眼を持つので「一面三目八臂」の像と表現されることがあります。
唐招提寺の千手観音立像(国宝)や中山寺の馬頭観音坐像(重要文化財)など、
不空羂索観音以外にも第三の眼を持つ仏像はいますので、次にお寺に参拝する時は、仏像の眉間にも注目して見て下さいね。
多面多臂とは別の次元として、多目の像を挙げましたが、仏像には足の数が多い仏像もいます。
その代表が大威徳明王(だいいとくみょうおう)です。
大威徳明王は水牛にまたがっていますが、足が6本あります。
有名な大威徳明王の作例は東寺講堂の大威徳明王像(国宝)です。
大威徳明王は足以外に顔と腕も多い多面多臂の仏で顔が6つ、腕が6本あります。
なので大威徳明王は「六面六臂六足」あるいは「六面六臂六脚」と呼べます。
ちなみに東寺の大威徳明王像の6つの顔の眉間には、
それぞれ第三の眼がありますから目の数を含めた言い回しをすると大変なことになります(笑)
日常では聞きなれない多面多臂という言葉ですが、阿修羅や千手観音を通じて、身近に感じて頂ければ嬉しいです。