興福寺国宝館では多数の仏像が展示公開されています。
国宝や重要文化財などの仏像の一覧をわかる範囲でまとめています。
興福寺国宝館の仏像でおすすめは?
国宝館の目玉となる仏像は、やはり乾漆八部衆立像の中の1体にあたる阿修羅像でしょう。
国宝の仏頭、巨大な千手観音菩薩立像、コミカルな龍燈鬼・天燈鬼立像なども見どころです。
上記はすべて国宝指定されている仏像で、国宝館には他にも国宝の仏像が展示されています。
人によって好みが違うので一概には言えませんが、国宝指定されている仏像全般が見どころと言えるかもしれません。
興福寺東金堂の仏像一覧!十二神将や維摩居士・文殊菩薩など国宝多数
国宝館で展示されている国宝の仏像一覧
国宝館で展示される国宝の仏像8件の概要を紹介します。
乾漆八部衆立像(国宝)
- 制作時代:奈良時代
- 軀数 :8軀
- 技法など:乾漆造、彩色
八部衆立像は、734年(天平6年)に創建された西金堂の本尊・釈迦如来像の周囲に安置されていました。
後述する十大弟子立像とは、同一の工房で造像され、もともと一具で祀られていました。
国宝・八部衆立像の像高
- 阿修羅像の像高:153.4cm
- 五部浄像の像高:50.0cm(上半身のみ)
- 沙羯羅像の像高:154.5cm
- 鳩槃荼像の像高:150.5cm
- 乾闥婆像の像高:148.0cm
- 迦楼羅像の像高:149.0cm
- 緊那羅像の像高:152.4cm
- 畢婆迦羅像の像高:155.4cm
銅造仏頭(国宝)
- 制作時代:白鳳時代
- 軀数 :1軀
- 像高 :98.3cm
- 技法など:銅造、鍍金(ときん)
仏頭の詳細は下記記事で紹介しています。
興福寺仏頭の大きさと歴史・特徴!なぜ山田寺から東金堂に移された?
木造千手観音菩薩立像(国宝)
- 制作時代:鎌倉時代
- 軀数 :1軀
- 像高 :520.5cm
- 技法など:桧材、寄木造、漆箔、玉眼
鎌倉時代再興期の食堂の本尊。
腕の数は一般的な千手観音像と同じ42本。
像内から膨大な数の納入品が発見され、納入品の中に1217年(建保5年)から1229年(寛喜元年)までの年紀を持つものがあるため、千手観音像が鎌倉時代の再興期の造像であると推定されています。
木造天燈鬼・龍燈鬼立像(国宝)
- 制作時代:鎌倉時代
- 軀数 :2軀
- 像高 :天燈鬼像 78.2cm
龍燈鬼像 77.8cm - 技法など:桧材、寄木造、彩色、玉眼
四天王像に踏みつけられている邪鬼(じゃき)が独立して灯籠を持ったのが天燈鬼と龍燈鬼です。
左手で持ち上げた燈籠を左肩で担ぐ赤い方が天燈鬼像。
燈籠を頭上に乗せて、龍をマフラーのように首に巻いている青い方が龍燈鬼。
龍燈鬼像は1215年(建保3年)に法橋康弁が造像したことが判明しています。
乾漆十大弟子立像(国宝)
- 制作時代:奈良時代
- 軀数 :6軀
- 技法など:乾漆造、彩色
釈迦の弟子の中で優秀な10人の高弟が十大弟子です。
なので十大弟子像は、もともと10軀1組で造像されましたが、現在、興福寺が所有しているのはそのうち6軀のみです。
残りの4軀は明治時代初期の廃仏毀釈の影響で、寺外に散逸してしまいました。
興福寺が所有する国宝・十大弟子6軀の像高
- 舎利弗(しゃりほつ)像の像高:152.7cm
- 目犍連(もくけんれん)像の像高:148.0cm
- 須菩提(すぼだい)像の像高:147.5cm
- 富楼那(ふるな)像の像高:148.7cm
- 迦旃延(かせんえん)像の像高:144.3cm
- 羅睺羅(らごら)像の像高:149.4cm
板彫十二神将立像(国宝)
- 制作時代:平安時代
- 軀数 :12軀(12枚)
- 像高 :縦88.9~100.3cm
:横33.6~42.7cm
:厚さ2.2~3.3cm - 技法など:桧材、一材製、板彫り、彩色
十二神将立像の一覧
- 毘羯羅(びから)大将像:子
- 招杜羅(しょうとら)大将像:丑
- 真達羅(しんだら)大将像:寅
- 摩虎羅(まこら)大将像:卯
- 波夷羅(はいら)大将像:辰
- 因達羅(いんだら)大将像:巳
- 珊底羅(さんていら)大将像:午
- 頞儞羅(あにら)大将像:未
- 安底羅(あんていら)大将像:申
- 迷企羅(めきら)大将像:酉
- 伐折羅(ばさら)大将像:戌
- 宮毘羅(くびら)大将像:亥
もともとは東金堂の本尊・薬師如来坐像の台座の周囲に貼りつけられていたと考えられています。
因達羅大将像は2枚の板で造られていますが、その他の11軀はそれぞれ1枚の桧板(ひのきいた)を浮き彫りして造っています。
当初は彩色されていましたが、現在はほとんど剥落しています。
木造金剛力士立像(国宝)
- 制作時代 :鎌倉時代
- 軀数 :2軀
- 像高(阿形):154.0cm
- 像高(吽形):153.7cm
- 技法など :桧材、寄木、彩色、玉眼
もともとは鎌倉時代再興期の西金堂の須弥壇上に安置されていました。
門の両脇に安置されていたものではないからか、像高は等身大程度です。
骨格、筋肉、血管など、実際の人間の体の形状を模倣して忠実に表現されています。
国宝館の重要文化財と無指定の仏像
国宝館では国宝以外の仏像も展示公開されています。
ここでは国宝館で展示されている重要文化財と無指定の仏像をわかる範囲で紹介します。
厨子入り木造弥勒菩薩半跏像(重要文化財)
- 制作時代:鎌倉時代
- 軀数 :1軀
- 像高 :57.7cm
- 厨子高 :165.8cm
- 技法など:桧材、寄木造、漆箔、玉眼
もともとは興福寺大乗院持仏堂(だいじょういんじぶつどう)に安置されていました。
弥勒菩薩半跏像の像内から多数の印仏(いんぶつ)や摺仏(しゅうぶつ)が発見されています。
厨子は春日厨子(かすがずし)風で、扉の内面には祖師(そし)像などが描かれています。
木造仏頭(重要文化財)
- 制作時代:鎌倉時代
- 軀数 :1軀
- 像高 :98.0cm(頂~顎)
- 技法など:桂材、寄木造、漆箔、彫眼
西金堂の旧本尊・丈六釈迦如来坐像の頭部。
運慶の作として知られています。
この像の手と思われる仏手も残っています。
木造化仏・飛天(重要文化財)
- 制作時代:鎌倉時代
- 軀数 :11軀
- 像高 :化仏 30.8cm~36.7cm
:飛天 35.0cm~62.0cm - 技法など:桂材、一木造、漆箔、彫眼
何らかの仏像の光背に取り付けられていた化仏と飛天です。
作風から木造仏頭の光背のものではないかと推測されています。
木造地蔵菩薩立像(重要文化財)
- 制作時代:平安時代
- 軀数 :1軀
- 像高 :139.7cm
- 技法など:桧材、一木造、彩色、彫眼
体の厚みや衣文の表現などに平安時代初期の特徴が見られ、10世紀に造像されたと推定されています。
木造釈迦如来坐像(重要文化財)
- 制作時代:平安時代
- 軀数 :1軀
- 像高 :227.0cm
- 技法など:桂材、寄木造、漆箔、彫眼
丸顔で温和な表情、衣文の皴が浅い部分に、平安時代の定朝様に通じるものがあります。
もともとどこのお堂に安置されていたのかという伝来ははっきりしておらず、近年まで東金堂内に仮安置されていました。
木造梵天・帝釈天立像(重要文化財)
- 制作時代:鎌倉時代
- 軀数 :2軀
- 像高 :梵天像 171.5cm
:帝釈天像 166.0cm - 技法など:桧材、寄木造、彩色、玉眼
鎌倉時代再興期の東金堂の像です。
木造梵天立像(重要文化財)
- 制作時代:鎌倉時代
- 軀数 :1軀
- 像高 :181.3cm
- 技法など:桧材、寄木造、彩色、玉眼
この梵天像と一具の帝釈天像も存在しましたが、現在は寺外に流出しています。
木造薬師如来坐像(重要文化財)
- 制作時代:平安時代
- 軀数 :1軀
- 像高 :107.5cm
- 技法など:桜材、一木造、漆箔、彫眼
1013年(長和2年)に造像、1247年(宝治元年)に修理されたことが判明しています。
木造地蔵菩薩半跏像
- 制作時代:鎌倉時代
- 軀数 :1軀
- 像高 :50.8cm
- 技法など:桂材、寄木造、彫眼、彩色
半跏像の地蔵菩薩は平安時代末期以降に見られます。
木造地蔵菩薩立像
- 制作時代:鎌倉時代
- 軀数 :1軀
- 像高 :54.5cm
- 技法など:桧材、寄木造、漆箔、玉眼
最後まで読んでくださりありがとうございました。