奈良の円成寺は、東大寺や興福寺などがあるエリアから少し離れた山の方にある寺院で、運慶の大日如来坐像を所蔵しています。
大日如来坐像は、運慶の初期の作品ですが、運慶の代表作に挙げられることが多い傑作仏像です。
この記事では、円成寺大日如来坐像が安置されいる場所や現地の拝観の環境などについて紹介します。
奈良・忍辱山円成寺の大日如来坐像は運慶作の国宝仏像
忍辱山(にんにくせん)円成寺の大日如来坐像は、智拳印を結ぶ金剛界の大日如来です。
大日如来坐像の台座には運慶の名を含む墨書銘があります。
運慶が生まれた年は定かではありませんが、20代半ばの若かりし頃の作品と推定されている国宝の仏像です。
張りのある頬や引き締まった体躯は、平安時代後期に爆発的に流行した定朝様(じょうちょうよう)の仏像とは、異なる新しい作風です。
当記事後半でも記載していますが、円成寺本堂には、定朝様の阿弥陀如来坐像が安置されているので、
円成寺参拝の際には、この大日如来坐像と比較してみましょう!
運慶は1175年11月に注文を受けて円成寺大日如来坐像の制作を始めました。
この大日如来坐像の像高は98.8センチメートルで、座高なのでサイズは等身大です。
等身大の仏像を造るのにかかる時間は、通常2~3カ月だそうですが、運慶は大日如来坐像の制作に11カ月もかけています。
円成寺の大日如来坐像の制作開始の2年前には運慶の長男にあたる湛慶(たんけい)が誕生しています。
湛慶は、京都の三十三間堂の中央に安置される巨大な千手観音坐像を代表作とする仏師です。
運慶の円成寺大日如来坐像は東京国立博物館の運慶展に出陳されることが決定していますが、
運慶展には湛慶や運慶の他の息子の仏像も展示されるようです。
円成寺大日如来坐像の作風は浄、瑠璃寺の大日如来坐像に少し似ています。
こちらは作者は運慶ではなく運慶の父・康慶(こうけい)の周辺の仏師と推測されているようです。
浄瑠璃寺の大日如来坐像は秘仏なので、いつでも拝観できるわけではありませんが、
じっくりと実物を見比べてみたいですね。
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円成寺の大日如来坐像は境内のどこで拝観できる?
運慶の大日如来坐像は、円成寺の多宝塔に安置されています。
秘仏ではないので、通常拝観できます。
多宝塔は拝観受付のすぐ右側にあります。
多宝塔の扉口はガラス張りになっていて、多宝塔の外側からガラス越しに大日如来坐像を拝観することになります。
ガラス越しということもあって比較的近い距離で拝観できます。
大日如来坐像が安置されている多宝塔は、1990年に再建された比較的新しい建造物です。
円成寺の拝観料と拝観時間
円成寺の浄土式庭園は、拝観受付より手前にあるため拝観無料ですが、本堂や多宝塔などの諸堂の拝観は有料です。
下記、拝観料を支払うことで諸堂を拝観することができます。
円成寺の拝観料
- 大人 400(350)円
- 中高生300(250)円
- 小学生100(100)円
※( )内の料金は、団体料金で、団体割引が適用されるのは30名以上の場合です。
続いて拝観時間です。
円成寺の拝観時間
9:00~17:00(受付終了時間が17:00)
円成寺で見学することをおすすめしたいのは、浄土式庭園と本堂と多宝塔です。
これらの拝観所要時間は20~30分くらいです。
寺社建築に興味をお持ちなら、楼門、春日堂・白山堂、宇賀神本殿も見逃さないようにすることをおすすめします。
本堂の阿弥陀如来坐像も見どころ
円成寺の仏像といえば、やはり多宝塔に祀られている大日如来坐像が運慶作の国宝仏像ということで目立ちますが、本堂の仏像も見どころです。
本尊の阿弥陀如来坐像は、平安時代後期の作の重要文化財です。
作風は平安時代後期に流行した定朝様の阿弥陀如来像で、穏やかな表情をしています。
円成寺の境内にある浄土式庭園とともに、極楽浄土の世界観を演出しています。
阿弥陀如来坐像を祀る須弥壇の四方に、四天王立像が安置されていますが、こちらも重要文化財の仏像です。
造像されたのは鎌倉時代で阿弥陀如来坐像より時代が下ります。
本堂内には他にも次の仏像が安置されています。
円成寺本堂のその他の仏像
- 南無仏大師立像 鎌倉時代(奈良県指定文化財)
- 十一面観音立像 平安時代中期~後期
- 十一面観音立像 鎌倉時代
- 薬師如来立像 平安時代後期
さらに、護摩堂にも仏像が安置されています。
円成寺護摩堂の仏像
- 不動明王立像 南北朝時代(奈良県指定文化財)
- 二童子像 江戸時代
- 僧形文殊菩薩坐像 鎌倉時代 堯慶作(奈良県指定文化財)
上記のとおり、円成寺には多宝塔の大日如来坐像だけでなく、本堂や護摩堂にも見ごたえのある仏像が安置されています。
時間が許す限り、じっくり拝観したいものですね。