京都国立博物館(京博)で2017の秋に開催される国宝展について掲載します。
京博の国宝展とは?
国宝展は、京都国立博物館の開館120周年を記念して催される特別展です。
展覧会名が示す通り、国宝展の展示品はすべて国宝指定されている文化財です。
絵画・書跡・彫刻・工芸・考古の各分野から、歴史と美を兼ね備えた国宝209件を展示します。
(会期中に展示替えあり)
京都国立博物館で国宝展が開催されるのは今回がはじめてではなく、1976年(昭和51年)に「日本国宝展」が開催されたことがあります。
2017年の国宝展は1976年の国宝展以来41年ぶりの開催となります。
京博の国宝展の開催概要
展覧会の会場
- 京都国立博物館の平成知新館
展覧会の開催期間
- 2017年(平成29年)10月3日(火)~11月26日(日)
開館時間
- 午前9時30分~午後6時00分(入館は午後5時30分まで)
※ただし会期中の毎週金・土曜日は午前9時30分~午後8時00分(入館は午後7時30分まで)
休館日
- 月曜日
※ただし10月9日(月・祝)は開館、10日(火)は休館
京博・国宝展の展示品一覧
会期中大きな展示替えが3回あるため、会期を4分割して1~4期と呼んでいます。
- 1期:10月3日(火)~10月15日(日)
- 2期:10月17日(火)~10月29日(日)
- 3期:10月31日(火)~11月12日(日)
- 4期:11月14日(火)~11月26日(日)
展示される文化財の一覧は↓です。
都合により出品される文化財の展示期間が変更される可能性もあります。
展示される国宝の公開頻度についてコメント
仏像を中心とした一部の国宝の普段の公開状況・レア度(展示頻度)はわかるので記載します。
長いので興味がある方だけ読み進めてください。
正倉院展2017年の日程や見学料金は?混雑せず空いている時間帯は?
四天王立像のうち広目天立像 奈良・法隆寺
- 一軀
- 飛鳥時代 7世紀
法隆寺金堂に安置されている四天王像四軀のうちの一軀です。
非公開の秘仏ではなく通年拝観可能です。
現存最古の四天王像。
梵天立像 奈良・唐招提寺
- 一軀
- 奈良時代 8世紀
唐招提寺金堂に安置されいます。
非公開の秘仏ではなく通年拝観可能です。
唐招提寺金堂の梵天・帝釈天の二軀で一件の国宝に指定されていますが、国宝展には梵天のみが出陳されます。
奈良唐招提寺の国宝仏像彫刻の件数と一覧!安置場所と公開期間も
虚空蔵菩薩立像 京都・醍醐寺
- 一軀
- 平安時代 9世紀
通常非公開の仏像です。
醍醐寺の霊宝館で公開されることがあります。
2015年に国宝指定された国宝界の若手。
薬師如来坐像 奈良国立博物館
- 一軀
- 平安時代 9世紀
奈良国立博物館のなら仏像館で展示されることがあります。
なら仏像館では、奈良国立博物館の館蔵品と寄託品の仏像が通年展示されていますが、数ヶ月に1度展示替えが行われるため、国宝・薬師如来坐像が年間通して展示されているわけではありません。
ですが、例年数ヶ月はなら仏像館で展示されているので(私の記憶ではですが…)、拝観する機会は少なくない仏像です。
仏像・神像の彫刻の部の国宝のほとんどは神社仏閣が所有していますが、国立博物館が所有する唯一の国宝彫刻です。
博物館の文化財(美術作品)の寄託と寄贈の違いとは?所有権がポイント
八幡三神坐像のうち僧形八幡神坐像・神功皇后坐像 奈良・薬師寺
- 二軀
- 平安時代 9世紀
薬師寺が所有する神像ですが、奈良国立博物館に寄託されています。
なら仏像館で毎年数ヶ月は展示される神像です。
僧形八幡神・神功皇后・仲津姫命坐像の三軀で一件の国宝に指定されていますが、国宝展ではそのうち二軀が展示されます。
兜跋毘沙門天立像 京都・教王護国寺(東寺)
- 一軀
- 中国・唐時代 9世紀
東寺の宝物館に安置されていますが、宝物館は毎年春と秋のみ特別公開されるため通年拝観できる仏像ではありません。
通常非公開とはいえ、宝物館の公開期間が
- 春期特別公開:3月20日~ 5月25日
- 秋期特別公開:9月20日~11月25日
であるため、毎年約4ヶ月間拝観する機会があります。
平安京の入口である羅城門の楼上に祀られていたという兜跋毘沙門天像です。
エキゾチックな仏像。
釈迦如来立像 京都・清凉寺
- 一軀
- 中国・北宋時代 雍熙2年(985)
清凉寺本堂に安置されている本尊です。
通常非公開の秘仏です。
毎月8日と清凉寺の霊宝館で特別公開が行われる4月・5月・10月・11月は御開帳されるため拝観可能です。
日本各地にこの像の模造が100軀近くあり、それらは「清凉寺式釈迦」と呼ばれています。
釈迦如来立像の内部からは多数の納入品が発見されました。
納入品の一部は、清凉寺霊宝館で展示されているため、霊宝館の特別公開期間は拝観することができます。
国宝展でも納入品の一部が展示されます。
下記が釈迦如来立像納入品のうち国宝展で公開されるもの
- 奝然入宋求法巡礼行並瑞像造立記 一通
- 入瑞像五臓具記捨物注文 一通
- 絹製五臓(複製) 一口
清涼寺霊宝館の特別公開期間や入館料は?国宝・重文仏像の一覧も
雲中供養菩薩像(北8号・北9号・北15号) 京都・平等院
- 三軀
- 平安時代 天喜元年(1053)
合計52軀現存する雲中供養菩薩のうち3軀が国宝展で展示されます。
雲中供養菩薩は、その半数が平等院鳳凰堂内部に安置され、残りの半数は「鳳翔館」と呼ばれる平等院境内の展示施設で展示されています。
通年拝観可能な仏像です。
雲中供養菩薩の中で最も出来が良いと評されることもある北25号は出陳されません。
薬師如来坐像 円勢・長円作 京都・仁和寺
- 一軀
- 平安時代 康和5年(1103)
仁和寺霊明殿の本尊ですが、秘仏であるため通常非公開です。
約18年ぶり(?)に一般公開されます。
国宝彫刻の中でも拝観する機会が極めて少ない激レアな仏像です。
国宝彫刻の中では
- 絶対秘仏で一般公開されたことがない京都・東寺御影堂の不動明王坐像
- 同じく一般公開されたことがない奈良・吉野水分神社の玉依姫坐像
- 通常非公開で今後いつ公開されるのかわからない滋賀・園城寺の新羅明神坐像
の次に拝観する機会が少ないのではないでしょうか。
かなり歴の長いマニアさんでないと拝観したことがないでしょう。
私は国宝展で展示されるのがこの仏像一軀だけだったとしても行きます!(笑)
(もちろん国宝展で展示される他の国宝の中にも観覧を楽しみにしているものはたくさんあります!)
この薬師如来坐像は、東京国立博物館の仁和寺展でも展示されます。
東博で仁和寺展が開催決定!国宝阿弥陀如来や道明寺十一面を展示
四天王立像のうち多聞天立像 京都・浄瑠璃寺
- 一軀
- 平安時代 11~12世紀
浄瑠璃寺の四天王像四軀のうちの一軀です。
四天王像のうち、持国天像と増長天像は浄瑠璃寺本堂に安置されていて、通常拝観可能です。
広目天像は東京国立博物館に寄託されていて、東京国立博物館で不定期で展示されます。
国宝展で出陳される多聞天像は京都国立博物館に寄託されていて、こちらも京都国立博物館で不定期で展示されます。
多聞天像は個人的に、京都国立博物館2014年春期の特別展「南山城の古寺巡礼」で出陳されたことが記憶に鮮明に残っています。
大日如来坐像 大阪・金剛寺
- 一軀
- 平安時代 12世紀
↓の「不動明王像 行快作 大阪・金剛寺」と合わせてコメントします。
不動明王坐像 行快作 大阪・金剛寺
- 一軀
- 鎌倉時代 天福2年(1234)
金剛寺の大日如来坐像・不動明王坐像・降三世明王坐像は三軀で一件の国宝に指定されています。
2017年に国宝指定されたばかりの国宝界のニューフェイスです。
金剛寺では平成21年から平成の大修理が行われているため工事期間中、
三軀のうち大日如来坐像・不動明王坐像は京都国立博物館に寄託され、降三世明王坐像は奈良国立博物館に寄託されています。
工事が終われば金剛寺の金堂に戻されるようです。
三軀ともかなりの巨像です。
大日如来坐像・不動明王坐像は京都国立博物館の平成知新館でずっと展示されています。
平成知新館では数ヶ月一度くらいの頻度で、展示替えが行われているのにずっとです。
大日如来坐像・不動明王坐像と関係のない特別展が平成知新館で開催されるときも
「この仏像は本展覧会とは関係がありません」という趣旨の説明書きつけて、移動されることなく平成知新館で展示されている…それぐらい大きな仏像です。
これは奈良国立博物館に寄託されている降三世明王坐像も同じです。
降三世明王坐像が展示されているなら仏像館でも数ヶ月に一度は展示替えが行われていますが、降三世明王坐像は大きすぎるからかずっと展示され続けています。
とにかくデカい仏像です。
天野山金剛寺の大日如来が国宝に指定!場所は大阪府河内長野市のどこ?
仏像以外の文化財もいくつかピックアップします。
吉祥天像 奈良・薬師寺
- 一幀
- 奈良時代 8世紀
通常非公開です。
毎年一月前半と秋に薬師寺で特別公開されます。
社会の教科書に載っている代表的な仏画のひとつ。
源氏物語絵巻 柏木(三)・竹河(一) 愛知・徳川美術館
- 四十三面のうち五面
- 平安時代 12世紀
現存する源氏物語絵巻は、絵巻全体の一部のみです。
そのうち絵15面・詞28面を愛知の徳川美術館が所有し、絵4面・詞9面を東京の五島美術館を所有しています。
源氏物語絵巻は作品保存の観点から展示期間が制限されていて、毎年1回、2~3場面ずつ公開されます。
5年ごとに五島美術館のものと合わせた現存する源氏物語絵巻全点の公開を行っています。
前回は2015年秋に徳川美術館で全点公開が行われました。
次回の徳川美術館での全点公開は2025年予定です。
国宝展では徳川美術館が所有する源氏物語絵巻の一部が展示されます。
伝源頼朝像・伝平重盛像・伝藤原光能像 京都・神護寺
- 一幅
- 鎌倉時代 13世紀
神護寺三像と呼ばれる三人の肖像画です。
「伝源頼朝像」は鎌倉幕府を開いた源頼朝の肖像画として歴史の教科書に載っていたので誰しも一度は見たことがあるのではないでしょうか。
近年「これは源頼朝の肖像ではない!」という声が挙がったため「”伝”源頼朝像」と呼ばれるようになったそうな。
神護寺三像のうち、伝源頼朝像と伝平重盛像は京都国立博物館に寄託され、伝藤原光能像は東京国立博物館に寄託されています。
毎年5月に神護寺で虫干しが行われますが、伝源頼朝像と伝平重盛像はその際に神護寺で特別公開されます。
伝藤原光能像は東京国立博物館で不定期に展示されているようです。
楓図壁貼付 長谷川等伯筆 京都・智積院
- 六面のうち四面
- 桃山時代 16世紀
京都国立博物館から歩いて行ける智積院の大書院の障壁画25面の一部です。
智積院の収蔵庫で通年拝観可能です。
個人的には、ライバル的存在の狩野永徳の作品で、楓図と同様に巨木がうねる「檜図屏風」との共演を見たかったところ。
これだけ国宝が集結するのだから贅沢は言うまい。
桜図壁貼付 長谷川久蔵筆 京都・智積院
- 五面のうち四面
- 桃山時代 16世紀
京都国立博物館から歩いて行ける智積院の大書院の障壁画25面の一部です。
智積院の収蔵庫で通年拝観可能です。
長谷川急蔵は長谷川等伯の長男で長谷川派の次代を担うことを嘱望されていたと思われますが、26歳で早世しました。
惜しい…。
松林図屏風 長谷川等伯筆 東京国立博物館
- 六曲一双
- 桃山時代 16世紀
松林図屏風は毎年一月前半の十数日間、東京国立博物館にて展示されています。
風神雷神図屏風 俵屋宗達筆 京都・建仁寺
- 二曲一双
- 江戸時代 17世紀
風神雷神図屏風も歴史の教科書で見た記憶がある人が大半でしょう。
京都国立博物館に寄託されていて、たまに展示されます。
京都国立博物館の2015年秋の特別展「琳派 京を彩る」で展示されたことが懐かしい。
行列に並んだことも懐かしい(笑)
国宝展も確実に行列ができるでしょうな。
孔雀明王像 京都・仁和寺
- 一幅
- 中国・北宋時代 11~12世紀
仁和寺では毎年春と秋に境内の霊宝館で宝物の特別公開が実施されます。
仏像は毎回同じものが展示されるものの、それ以外の宝物は毎回展示内容が変わり、仏画である孔雀明王像もたまにしか公開されません。
銅板法華説相図 奈良・長谷寺
- 一面
- 飛鳥~奈良時代 7~8世紀
奈良国立博物館に寄託されていて、長谷寺には複製品が安置されてます。
なら仏像館で不定期に展示されることがありますが、公開される頻度が少ない文化財ではありません。
金印 福岡市博物館
- 一顆
- 弥生時代 1世紀
歴史の教科書で見たことがあるであろう金印です。
福岡市博物館で常設展示されています。
金印が常設展示されていることを知ったときは驚いたものです。
金銅藤原道長経筒 奈良・金峯神社
- 一口
- 平安時代 寛弘4年(1007)
京都国立博物館に寄託されています。
展示期間は不定期ですが、平成知新館三階で展示されることがあります。
公開頻度が少ない国宝ではありません。
仏像以外の国宝をピックアップしてみたら絵画ばっかりでした(笑)
会期中の混雑状況や待ち時間がどのくらいになるか気になりますが、過去の展覧会と同様に京博が国宝展専用のツイッターを開設して混雑状況を発信することになるでしょう。